ベナン共和国のアーティスト・イン・レジデンスプロジェクト

2016年1月 - 2月
芸術文化センター ベナン共和国、コトヌー

2016年1月。一か月に渡って一点物の作品シリーズを制作する為、ベナンのコトヌー芸術文化センターに滞在アーティストとして招聘されました。この滞在の終わりには制作した作品が2016年2月19日から3月30日まで本センターで開催された展覧会「Terre de Mémoire – 記憶の土地」にて展示されました。

 

独自のアプローチを生み出す私のプロジェクトはアフリカとアジアの影響をミックスさせた作品を制作するということに集中していました。そのため、作品はベナンの南西にあるモノ県のセ村で採集された陶土を使用して制作され、さらに現地で私自身が製作した楽窯で焼成されました。この窯のおかげで16世紀に日本に伝わった韓国由来の技術、楽焼の焼成をすることができました。この技術は主として茶道(日本では茶の湯とも呼ばれていました)の茶碗の制作に使われています。

 

私の冒険の最初の数日間はセ村の製陶主任のマダム・アダングロの家に行くことから始まりました。この器用で経験豊かなマダムのもとで私は陶土を仕入れることができたのです。セ村の陶土は私が使い慣れている1300°Cの熱に耐えるスペインやフランスの陶土とは異なり、最高1100°Cで焼成します。

 

そのため、私は幾度もマダム・アダングロや村の陶工達を訪ねました。そうして器と壺の成形 百単位での野焼き焼成を見学する機会を得ることができたのです。特にマダム・アダングロとの交流は心を動かされる大変充実した内容のものでした。私の滞在の最後に、彼女が「陶土を手に入れるために“男性の陶芸家“が会いにやってきたことは本当に驚くべきことだった」と告白してくれたのです。というのも、サハラ以南のアフリカでは陶器製造は女性によって行われていて、この分野で男性が働くこと自体が本当に稀だというのです。

 

一旦、陶土が手に入ると、私はセンターのアシスタント達と共に17世紀から19世紀にかけてダホメ王国(フォン語ではダンソメ)の首都であったアボメイに行き、そこで入手した手動のろくろで作品制作に専念しました。

 

ブタンガスを使用した楽窯は灯油のドラム缶を土台にして作られました。とりわけ、私が厚さ5cmのセラミックファイバーを円筒の壁に設置し粘土で固定できるよう、ある溶接職人が金属製の土台に開口部分(例 : 煙突、火口、側面の穴など)を作ってくれました。この材料は窯本体を断熱し、温度上昇を促進するために必要不可欠なものです。結果、私は毎回4時間ほどを要した950°C-1050°Cでの焼成を10回実施することができました。

 

釉薬をかけた作品もありますが、他の作品は故意的に釉なしの素焼きの状態を残しました。一方はアジアからやって来た技法によるエナメル質の釉に覆われた作品群、もう一方はアフリカの土特有の赤褐色の色合いを誇り高く身にまとった素焼きの作品群です。展示室に作品が一つ一つ双方に設置される否やと作品の全体像はこの二つのグループ間の対話を演出したコントラストの効果にぴったりと合いました。そしてこれらの作品の中央にて、見学客に一見違うように見える二つの世界の懸け橋をイメージさせるのです。

 

芸術文化センターでの展覧会「Terre de Mémoire – 記憶の土地」のべルニサージュの夜に、私はセ村に先祖代々伝わる製陶の技術に日の目を見せる為、壺の成形をデモンストレーションしてもらうようマダム・アダングロを招待しました。賞賛を受けたこのデモンストレーションに続き、今度は私が器を焼成する楽焼のデモンストレーションを行いました(最後の2枚の写真)。この最後に作った作品はセンターの展示作品としては選ばれませんでした。

 

そこで今年の夏、この器を伝統的な薪窯で新たに焼成する為に備前へ持っていこうと思っています。木灰で釉掛し、新しい一層によってこの器を飾るべきだと思っています。「BBプロジェクト」(ベナンと備前から取ったBB)と名づけられたこの器の三度目の焼成をするプロジェクトで陶芸を通したアフリカ文化とアジア文化の懸け橋としてのアプローチを深く掘り下げることができるに違いありません。

 

この器は今回のクリエーションの経験を一般の皆さんと共有する為、そして世界の多様な地域での工芸と芸術の慣行の相似性と相違性についてのディスカッションを増やしていく為に今後の展覧会に出品していきたいと思っています。

 

滞在日記は FacebookInstagram #beninresidency2016にてご覧いただけます。

 

ビデオ :

バイクタクシーの上に乗せて楽窯の土台を輸送

セ村の壺製作デモンストレーション

セ村の壺焼成の様子

 

リンク :

展覧会「Terre de Mémoire – 記憶の土地」写真

芸術文化センター

楽焼

“キング・フンデックピンク氏が実践的なプレ・べルニサージュを開催” – Le Mutateur, 2016年2月24日、マルセル・クポゴド記